ニコ生「小池一夫のキャラクター塾」で虚淵玄と対談したのをタイムシフトで見た。
濃い話だった。そのダイジェスト。
※口調や語尾などは簡潔になるように改変。読みやすいように、語順なども入れ替えてます。(^_^;)
冒頭で虚淵玄のことを「ライバル出現」と言っていたw
その意味は、
「自分はキャラクターから作ると弟子たちに教えてきたけど、虚淵玄はその対極なんで是非対談しないといけない」と思っていたと。
虚淵玄は身長160cmだって。でも作風からデカイと思われがちらしい。
で、小池一夫の印象は「デカイ」と。「刀持ってそう」とかw
小池一夫「鹿目まどかという変わった名前の意味を考え始めると、キャラクターに深く入ってしまった。言い難くてむつかしい名前のほうがいいのかな?」
虚淵玄「変な名前にしとくと、グーグル検索で同姓同名が出ないので有利かなと。でも声優には「言い難い」と不評だった。字面の可愛さだけで決めてしまった」
小「暁美+ほむらは、うまいマッチングだと思う。自分は強そうな男には強そうな名前、怪しげな男には怪しげな名前をつけてきたけれど」
虚「意外性からフックさせなきゃなと。僕らが書き始めた段階では、ビジュアルと名前の印象が共通してるキャラクターがすでに大勢いた」
小「紙の漫画では第1話7ページで話に引き込まないとお客さんが離れちゃう。あなたは引きこもうとしない」
虚「あれは先輩の黒田洋介さんに教わったスタイルで、1話目で説明しないで意外性で途方にくれさせる。2話目で物語の世界観やルール、法則などを説明。3話目ではそのルール以外のことも起こるというサプライズ」
小「1話でキュゥべえが血まみれで逃げて来て、ほむらが追っかけてくる。僕はこの時点でほむらが悪役と決めちゃう」
虚「お客さんにわかった気にさせてはマズイかもしれないんです。今の情報だけで語ったら違うかもしれない、という不安感を残し、引っ張らないといけない」
小「いまは漫画家の描くスピードが遅れている。」
虚「昔よりも描き込んだ絵を要求されてませんか?画集見てるみたいな気がする」
小「劇画のあとに僕らが入ってきたんで、描きこまないといけなくなった。(描き込む時間をとられた)高橋留美子なんかは20年間牢屋暮らしみたいになった。留美子の両親に、留美子は漫画家になって売れて幸せだと思いますが、結婚して子どもを産んでたのと比べてどっちが幸せでしょう、と言われた」
小「まどかは神様になったのかな?」(視聴者のコメントを拾った?)
虚「まどかがうまく行ったのは世界観そのものをキャラクターにしたからという気がする。白い毛むくじゃらにしゃべらせて、あいつが主張する世界観に抗って、魔法少女が大切にされる世界観そのものがまどか」
小「僕はキャラクターがあって、そのキャラクターが世界観を語る。世界観があって、その中にキャラクターが入って行くという考え方は初めて聞いた」
小「ほむらはどういうもの?」
虚「ほむらは、世界そのものが人格を持って眺めていることを、たったひとりだけ理解している」
虚「キャラクター資料を読んで、これができないから続編ができないと思い知った。劇場版は自分一人ではできなかった。キャラクターを作ってストーリーを作るという発想が無かった。ドラマにこだわって今までやってきた。蒼樹さんのキャラクター設定で自分の引き出しを開けられた」
小「やっぱりキャラクターがあったほうがいいでしょ?w」
小「昔からアニメの脚本家はあまり口出さない。形だけは脚本となってるけど。まどかマギカは、新房さんがあなたの意見を取り入れて作った?」
虚「あとから聞いたけど新房さんの作戦で、アニメの方法論に染まっていない外部のライターを呼んで、忠実に映像化すれば新しいのができるだろうと」
虚「僕らはキャラクターシンキングを本能で身に付けている世代。それが逆に裏目に出た。明確な目的意識や倫理観があって、初めて役に立つ」
虚「小学校の頃にナチスの考えていたことをキャラクターシンキングしちゃった。許しがたい行いなのに理解できた。その頃から自分の中のキャラクターシンキングの暴走に恐れていた」
小「僕は悪のキャラクターを先に作れと言ってる。悪を倒すために主人公がたどり着かないといけない。」
虚「悪のキャラクターを倒す力を理解してないと、幼い頃は多重人格者というか、自分の中の悪党に負ける感じだった」
虚「初音ミクが成立するのは、受け取った世代がキャラクターを動かす方法を本能で身に付けているから」
小「主人公や悪役にしゃべらせるとキャラクターがボケる。だから説明役に語らせる。悪役の心には欠点がある。欠点があるから悪なんだ、と。主役には戦いのじゃまになる弱点がある。子連れ狼には子どもという弱点があるのでハラハラする」
虚「クライング・フリーマンの人を殺した瞬間だけ、自由な心が戻ってくるというのはシビレた。これがあるからこの人は憎めないとなっちゃう」
小「いくら洗脳された殺し屋でも、悪は悪なので涙を流すというキャラクターに大勢の人が感情移入してれたと思う」
23歳視聴者の質問メール「理想の主人公のタイプは?」
虚「物語によって変わる。こういうキャラクターで物語に切り込んだほうがいいだろうと」
小「常に考えることは自分との対比。自分にはできない、と。時代劇は刀を持つ人(が主役)。人を殺すキャラクターで、それは自分にはできない。そこに矛盾を感じて、キャラクターにする」
小「自分には無い、人を切れるという覚悟を持ってるキャラクターが好き」
23歳男性「ハードボイルドな世界観が多い虚淵玄の今後手がけたいジャンルは?」
虚「僕はあれをハードボイルドとは思ってない。あれは温すぎる。弱さを出しちゃいたくなる。広報上はハードボイルドと言っとけばいいと思ってるだけ。本当のハードボイルドを一度やってみたい」
虚「今はキャラクターの行動動機を察する力が衰えている気がする。どこまでお客さんを突き放していいのか?いまハードボイルドをやるのは危険なチャレンジだと思う」
14歳「まどかマギカの魔女でどのキャラクターが気に入っていますか?」
虚「えこひいきになるんで‥。どの子も好きです!w」
小「僕も誰って決められない」
年配の方「ほむらの翼が黒くなったのは?」
虚「犬カレーさんに聞いていただくしかないです。犬カレーさんが何かを感じて描いた。」
虚「ストーリーの手法の弱点で、一度完結すると続きを作れない。自分が意図しなかったキャラクター性が育って続きが作れた」
虚「劇場版を見れば羽の謎が解けるかも知れませんw」
小「物語の終わりに固執しないですか?僕は物語を締めるときにキャラクターが死んだり、印象的な一言を言わせたりする」
虚「小説なら固執しますけど、自分は監督や視聴者に委ねます」
小「僕も委ねるけど、子連れ狼のラストは、孫よと言わせるけど、それまでの恩讐が消えたという意味を表したかった。これを考えるのに一週間かかった」
虚「脚本は最初の工程でしかない。監督や絵コンテ、演出に伝われば彼ら次第。まどかマギカの映像を見てびっくりしたけど、納得した。こうして欲しいというラストがあったら、それを汲んでいたはず。ああいうラストだったから続きを書けた」
小「漫画原作は、たったひとりの漫画家に伝えるメッセージ。それでも僕が思い描いたのと違う絵のときもある。あなたは2人や3人。それで続きが書けるのはハッピーなこと」
26歳「まどかマギカにおいて影響を受けた作品は?好きな作家は?」
虚「ひだまりスケッチ、リリカルなのは、コゼットの肖像。企画貰ったときにたて続けに見た。」
虚「作家で身を立てようと思ったのは、スティーブン・キング。自分の想像から生まれる恐怖心を克服する為に書くと知って、その手があったかと」
小「僕もスティーブン・キングに影響を受けましたね。ミザリーっていう作品は、途中で何度も見るのやめようと思ったけれど」
虚「ミザリーは、物書く立場からは恐ろしい。作家なのによく書けたな、と。」
21歳男性「ガンスリンガーストラトスの世界観の原案の気をつけた点などは?」
虚「ゲームのプログラムとキャラクターの数の要望があって、そこにどうはめていくか。8人のキャラクターの相関関係が複雑になるように意識した。孤立するキャラは作らないように、キャラクターに必ず誰か好意を持っていたり憎しみを持っていたり」
愛知県21歳「いままでの作品ではトラウマを負っているキャラクターが多い。現在ではけいおんのようなトラウマの薄い作品のほうが多い。トラウマをキャラクターに付与することは?」
小「エヴァとかガンダムは主役がトラウマを持っていた。途中でだんだんわけがわからなくなり、つまらなくなった。僕は歪んだトラウマを持つ悪役ときっちりとした正義感を持つ主役とはっきりと分けて作る。」
虚「日常系や癒し系の娯楽は、進化の根元で別系統。視聴者にストレスを与える快楽か、ストレスを慰撫する快楽。同じアニメというジャンルだけど、出だしから違うと思う」
小「キャラクターとは人間の本能。赤ん坊をかわいいと思ったり、アニミズム、シミュラクラ効果などで何でもキャラクター化したがる。トラウマとか決めないで世の中の流れに沿って作ればいい」
愛知県21歳「キュゥべえの生態系は?」
虚「設定から入るタチじゃないので、深いとこは考えていない。倫理観の違いを出したかったので、同胞の死を悼まない=死体をもったいないから食べてしまう知的生命体とは人類は仲良くできない、というのを表現したかった。ここはキャラ立てありきで作った」
愛知県「キャラクターシンキングは江戸時代の芸能から?」
小「キャラクターとは意識してないでしょうけど、江戸時代のはキャラクターが中心。侍、同心、与力など、社会のシステムがキャラクターで成り立っていた」
小「将軍綱吉だけは名前が(記憶に)残ってる。生類憐れみの令を出したので、キャラクターとして残っている」
虚「AKB48のような変な多様化は無かった」
小「娯楽が少なかった、庶民が楽しめるキャラクターが少なかった」
小「幕末から明治に、文語体から口語体へと変化した幽霊小説が売れた。幽霊というキャラクターが口語体という新語を作った」
虚「幽霊は身近なほうが怖いですね」
神奈川県男性「とある小説のあとがきでハッピーエンドが書けないと書いていたけど、今は?」
虚「ハッピーの定義を変えることで書けるようになった」
虚「傍目には悲劇でも、そこに救いがあればハッピーエンドと呼んでいい」
小「僕はハッピーエンドとか考えていない。書きたいものを書いている。自分で書きたいから主人公でも殺す。子連れ狼を殺したときはテレビ局から怒られた。でも、人を殺してしまった殺人者ですから、死なせてやると。あれでよかったと思ってます」
最後、対談の感想。
虚「生は初めてで、最初は一時間持つか不安だったけど、パワーもらいました」
小「あなたの言葉の中から色んなことを拾わせてもらいました」
小「キャラクターシンキングという考えも、キャラクター新論に入れていかないといけない」
小池一夫のキャラクター新論
ソーシャルメディアが動かすキャラクターの力
この本、ニコ生の過去放送2本が付属DVDで見れるらしい。
さくまあきらの回を見てみたいんで、買ってみる。
後日、感想を書く予定。
最後のアンケートは99.5%が「1+2(よかった)」だった。
アニメの方法論に染まっていない外部のライターを呼んでってのは、フラクタルを思い出した。
フラクタルも似たようなことをしたかったんだろうね。
あっちは失敗だったけど。
まあ、東浩紀は「アニメの方法論に染まってない」とは言えないのかな?
劇場版でほむらの翼の謎がわかるかも、と宣伝してたのは笑ったw
スティーブン・キングが恐怖心克服の為に書くのに準えてたけど、
自分の中の悪党に負けるかも、っていう恐れが創作動機だったのは意外。
アニミズム=キャラクター化ってのも面白い話だった。
ガンスリンガーストラトスの質問を聞いた時、番組の趣旨と違うんじゃね?と思ったけど、キャラクターの話につなげてたのはうまい。
孤立するキャラを作らないように、と言ったら「マミさんに謝れ」とかコメントが沸いていたw
虚淵玄は最初緊張してたけど、中盤からはなんかノリノリだったw
「パワーもらった」と言ってたけど、その通りなんだろうね。
小池一夫が「あなたの言葉から色々拾った」と言ってたけど、自分の言葉がちゃんと拾ってもらえるんで元気づけられたって感じだった。
虚淵玄は「画面では伝わらないかも」と言ってたけど、本人の変化を見たら「だろうな」と思ったw

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